中華料理

テーブルセッティング

お箸

香港のレストランでよく見かける、黒と白のお箸。

 

これは、黒い方が自分用、白い方は取り箸です(といっても、テーブルマナーに大らかな香港では、逆に使っていてもOKですので、ドキドキしないでくださいね)。

 

以前の香港では、取り箸はそれほど使われませんでした。それが変化したきっかけは、2003年に流行したSARSです。大皿料理を皆でシェアする中華料理で、ウイルスの経口感染を防ぐための方法として一般に浸透しました。

 

ところで、この写真のように、お箸は日本と違い縦に置きます。長さは日本のものより長く、先端はそれほど尖っていません。初めは若干の違和感を感じるかもしれませんが、慣れれば使いづらさは感じません。

 

ちなみに、日本に持ち帰った香港のお箸をお客様に出したところ、どれだけ手が大きいのかとびっくりされたことがあります(笑)。もちろん、長さの違いは手の大きさの違いではなく、日本のように一人づつ目の前に置かれたお膳で食べる文化か、中華のように大きな円卓上に並ぶ大皿に遠くからでも箸を伸ばす文化であるかの違いでしょう。

食事のオーダーの仕方

中華料理は種類も豊富。どのようにメニューから料理を選んだらいいか迷いますよね。ここで三つのコツをご紹介します。

①分量:人数とだいたい同じ数の料理を注文すると分量的にちょうどよくなります。さらに、最初に前菜・スープを追加しても良いでしょう。

②種類:素材のカテゴリーが被らないように選びましょう。大まかに分けて、野菜料理、肉料理、魚料理、ご飯・麺からバランスよく選びます。4皿であればそれぞれから一品づつ。5皿であれば、たとえば魚料理を二皿にして、魚で一品、貝や甲殻類でもう一品。6皿であれば、さらに肉料理を二皿にして、鶏で一品、豚でもう一品、のように、それぞれのカテゴリーを細分化して増やしていきます。ご飯類は、味の濃い料理を注文した場合は途中で白飯を追加してもいいですし、最後にチャーハンや麺を注文しても良いでしょう。

③調理法:②でカテゴリーを決めたら、さらに調理法が被らないように選んでいきます。焼き物、炒め物、茹で物、蒸し物、揚げ物、煮物などです。たとえば、豚のロースト、野菜炒め、茹で蝦、蒸し魚、揚げ鶏、豆腐の煮込み、といった感じです。

最後に、もう少し食べたい場合には、デザートを追加します。ちなみに香港のお店ではデザートが無料サービスされることも多いですので、「デザートのサービスはありますか?」と店員さんに聞いてみてくださいね。


前菜

皮蛋酸薑(ピータンの甘酢生姜添え)

ピータンはアヒルの卵を熟成させたもの。コーヒーゼリーのような色の“白身”に、雪の結晶模様が浮かんでいるものは高級品です。


さて、ピータンには様々な食べ方がありますが、香港では生姜の甘酢漬けと白砂糖とともに前菜としていただきます。


スライスした生姜の甘酢漬けの表面に白砂糖をたっぷりまぶし、くし切りにしたピータンをくるっと巻きます。そのままパクっと頬張ってみてください。


ピータンに・・・砂糖??とビックリされるかもしれませんが、意外や意外。これこそ世紀の大発見ではないかと思えるくらい、絶妙なコンビネーション!これ以上にピータンの素材の美味しさを満喫できる方法は無いのでは思うほど。シンプルながら感動ものの前菜です。


ご自宅で試す場合には、臭いが弱く黄身がトロっとした「溏心皮蛋」と呼ばれるものをご用意くださいね。

鎮江肴肉(塩漬け豚肉の煮こごり)

「鎮江肴肉(塩漬け豚肉の煮こごり)」。江蘇省鎮江が発祥の料理です。

 

豚の脚を塩と硝酸カリウムに漬け込み、その後、ネギ・生姜・胡椒・八角・紹興酒で煮込みます。冷めるとスープのゼラチン質が固まり、まるで水晶のような美しいゼリー状に。冷製の前菜として、1㎝程度の厚さにスライスしていただきます。

 

スパイスである八角の独特な香りに、紹興酒の芳醇さが加わった上品なお味。このまま食べても十分美味しいのですが、さらに鎮江香醋と呼ばれる黒酢に浸していただくと、完璧なコンビネーションの完成!コクのある黒酢が、豚肉の旨味と塩気を上手に引き立ててくれるのです。

 

上海料理店でお食事する際には、ぜひお試しくださいね。私も必ず注文してしまう大好きな一品です。

スープ類

フカヒレスープ

中華の高級食材、「フカヒレ」のスープ。ただし写真では、フカヒレが下に沈んでいてよく見えません・・・(^_^;)

フカヒレとは、サメのヒレの軟骨部分。コラーゲンたっぷりのため、美容によいとされています。とはいえ、フカヒレ自体に味があるわけではなく、そのゼラチン質のこりこり・ぷるんとした食感と、スープのとろみを楽しみます。赤酢を垂らしていただくと、スープの味がしまって更に美味に!

もちろん、香港でも日常さかんに消費されている人気の食材です。が、「絶滅の危機にある」「漁の仕方が残酷」などと言われ、フカヒレの消費に反対する運動も起こっています。

また、中国本土では贅沢品として、公務接待に供することを禁止されているほどです。

ちなみに、高級車と大衆車の区別がつかない私。香港人から「あぁ、君にとっての車は、フカヒレもハルサメも一緒なんだね」と嘆かれたことがあります(笑)。

 

ツバメの巣入りスープ

広東料理の高級食材、「ツバメの巣」入りのスープです。スープ表面に載っている、透明のゼラチン質の素材がそれです。

ちなみに、私達が駅のホームなどでよく見かける一般的なツバメの巣は、ツバメの唾液に泥や枯草を混ぜて作られます。それに対して、アナツバメが断崖絶壁に作った巣は唾液のみで作られます。食用にするのは、このアナツバメの巣です。

楊貴妃が、その美貌を保つために愛食したという美容効果は有名ですが、滋養強壮に富む健康食として、病後や産後のお見舞いにもプレゼントされます。

まぁ、これといった味はしませんが、なにせ高級食材。これが宴席で出されたら、最高級のおもてなしを受けていると考えて間違いありません!

例湯

中華のメニューにある「例湯」。日ごとに違う季節の食材を、コトコト煮込んで作った栄養満点の日替わりスープのことです。写真のように、お椀の中にほとんど具が入っていない状態で出されることもありますが、そこは気にせず、まず飲んでみてください。濃厚なのは見た目の色だけでなく、その出汁の旨味。身体が喜ぶ優しい滋味にハマってしまいます!
 
ちなみに気になる具のほうは、別のお皿に盛られて出されるときもあります。どんな肉や魚、野菜や漢方素材からこの味が出ているのか、その健康的な組み合わせにも驚きます。
 

 

ちなみに、具材のほうは出汁が出てしまった後のため、あまり味がしません。なので、こちらはお醤油をつけて食べてみてくださいね(具は完食しなくてもOKですよ)。

肉料理

叉焼

ご覧ください、この写真!なんともいえぬジューシーさが絶品な叉焼(チャーシュー)です。表面には蜂蜜が丁寧に塗られ、その甘味も肉の旨さを上手に引き立てています。もう、これだけでお酒が進んでしまいます!

 

広東料理の特徴の一つが、こういった肉の焼き物。ガチョウや鶏、豚などの肉を、外はパリパリ・中はジューシーに焼く、その絶妙なさじ加減に、職人の技が高度に凝縮されているのです。

 

鶏のロースト

写真は「鶏のロースト・尾頭付き」です。とはいっても、さすがに尾はありませんが、お皿の右側に写る鶏さんの頭。なんとも同情したくなる表情です。

中華のターンテーブルには、たくさんの大皿料理が並び、それがディナーの間、何周も回ってきます。すると、この鶏頭も円卓につく人々の顔を眺めるようにぐるぐると回転するわけですが・・・

上司との会食で、もしこの鶏頭があなたを見据えるように止まったら・・・なんと「お前はクビだ!」のサインなのです!

とはいえ、それも昔の習慣(今はそんな回りくどいことはしませんw)。鶏に見据えられてもビクビクせず、安心して美味しさを堪能してくださいね。

子豚の丸焼き

香港のお祝い事には必ず出てくるのが、コレ。この丸焼きになった頭を見て、何の動物だかわかりますか??・・・そう、「乳猪(子豚)」です。

鶏の丸焼きに頭がついてくるのも、慣れないうちはビックリでしたが、豚の頭ごとお皿に載ってくるのは、かなり衝撃的かもしれませんね。

レストランによっては、目の部分に赤い砂糖漬けのチェリーを楊枝で刺してデコレーションした状態で出してくれます。微妙な愛嬌が出ますw

ちなみに、これを手土産としてスポーツバッグに入れて日本に持ち込んだ知人がいます(今は禁止されています)。空港の手荷物X線検査に小さな骸骨が映ったことから、物議を醸して取り調べをうけたそうです。容疑は晴れたものの「紛らわしいことしないで下さい」とおしかりを受けたとか(笑)。

北京ダック

これはなんでしょう? 正解は、北京ダック用にローストされたアヒルちゃん。左側に首がついたままの丸焼き姿です。慣れない日本人には一瞬ぎょっとする光景かもしれませんが、香港人の友人は「きれ~い♡」とうっとりしてました。このつやといい、ぷくぷくした肉付きといい、美しくて美味しそうなのであります☆

ちなみに、日本の中華料理店で北京ダックを注文すると、皮の部分ばかりクレープで包んだ状態で出てきますが、香港では皮と肉の両方をクレープで巻いて食べるので、ボリューム感もほどよくあって美味しいのです。しかも、骨に残ったお肉はさらにひき肉状にしてレタス包みにしてくれたり、さらにガラをスープにしてくれたり、と展開して料理してくれたりもします。この展開料理は必ずしもメニューには書かれていないので、北京ダックを注文するときには、2品目・3品目まで加工してもらうように最初に店員さんに伝えてください。

アヒルの水かき

写真は「アヒルの水かきとアワビの煮つけ」。

アワビは高級食材とされていて、宴席料理で煮物としてよく出されます。アヒルの水かきは、これまた良いダシが出る食材ですから、この二つが一緒になったら、最強コンビです。

それにしても、アヒルの水かき。ショックな見た目ではありますが、その心理的葛藤を乗り越えてかぶりついてみましょう。

トゥルンとした歯ごたえの水かきはゼラチン質で、コラーゲンたっぷりのため、美容に良いと言われています。口の中に残る骨の処理に困るかもしれませんが、それはしゃぶりつくした後でペッと口から出してOKですよ。

魚料理

蒸し魚

広東料理で非常にポピュラーな魚料理は「清蒸魚」。白身魚に白髪ネギと生姜を乗せ、酒・醤油・油をかけて蒸したものです。

この料理によく使われる魚が「石斑魚(ハタ)」。しっとりもちもちの食感がおいしく、また骨と肉の身離れも良いので、とても食べやすいのです。

この料理が出ると、白いご飯が食べたくなりますので、「白飯」を追加でオーダーしましょう。

また、この蒸し汁が何とも言えず美味!香港人は、これをレンゲですくい、白飯の上からかけて食べたりもします。あぁ、思い出しただけで涎が・・・

上海蟹

秋と言えば、上海蟹(大閘蟹)の季節!

大閘蟹の美味しさは、なんといってもその濃厚な卵・白子にあります。甲羅を開けたときのワクワク感はたまりません!

そして、大閘蟹に合うのは、やはり紹興酒。また、蟹は東洋医学的には体を冷やす食べ物と考えられるため、食後には体を温める生姜茶が必ず出てきます。
 
とはいえ、蟹そのものは日本の毛ガニやタラバガニを見慣れていると、かなり小さい印象。爪の肉も少ないですし、足にいたってはストローのような細さ。それを一本ずつ、ちゅーちゅーと一生懸命吸って食べるのは、かなりの忍耐力を試されます。

ちなみに、大閘蟹は生きたまま、紐でグルグルと縛られた状態で売られています。香港人が「私いま、大閘蟹なの~」という時は、「株の運用が思わしくなく、手足を縛られたように動けない状態」という意味です。

 

酔っ払いエビ(酔蝦)

私が最高に美味しいと思う広東料理の一つ、「酔っ払いエビ(酔蝦)」。

これは、生きたままのエビに紹興酒を飲ませて、酔っぱらわせた状態のところを茹でた料理です。殻を手で剥きながら、唐辛子入りのピリ辛醤油にちょんちょんと浸していただきます。

まず、生きたままのエビを料理するだけあって、身が超新鮮でプリプリ!そのうえ、口の中に紹興酒の香りがふわっと広がり、それはもう最高に美味しいのです☆

この料理のポイントは、生きたままのエビで作ること。エビが紹興酒を飲むことで、内臓の隅々にまでしっかりと紹興酒が行き渡り、身から芳醇な香りが立つのです。死んだエビをいくら紹興酒に浸けても、同じ効果は出せません。

麺類

担担麺

写真右は、担担麺(=擔擔麵)。もともとは四川料理ですが、香港では香港流の擔擔麵が楽しめます。具は豚のひき肉や干しエビ、薬味はネギ、ピーナツ、ゴマが一般的です。

日本で担担麺を注文すると、ラーメンのようにコシのある麺が出てくることが多いのですが、私は香港のコシの無い麺が好きです。そのほうがピーナツのとろっとコクのあるスープが麺に絡んで美味しいのです。

ちなみに、辛いのが苦手な私は「擔擔麵、走辣(担担麺、辛み抜きね!)」と注文しています。四川省の方には邪道と思われるかもしれませんが・・・ぜひ、お試しを!

ご飯類

福建炒飯

日本の中華料理屋には必ずチャーハンがあるのに、なぜか滅多に見ないのがこれ、福建炒飯。


福建炒飯の魅力は、まず具の豊富さ。エビ・ホタテ・イカ・鶏・豚・椎茸と、うまみ成分豊富な具材達が勢ぞろい。これだけ見ても、美味しくならない理由がない!そこに、緑のアスパラガスの彩りとシャキシャキな食感。とろっとした餡の下には、黄色味が見た目にも美しいパラパラの卵チャーハン。このコンビネーションが口の中にじゅわ~っと広がった時の至福感といったら、もぉ~(萌)。


香港にお出かけの際は、ぜひ一度お試しあれ。ちなみに、日本でよく見る一般的な炒飯に近いものは「揚州炒飯」です。


精進料理

左のお皿は酢豚のように見えますが、実は精進料理。見た目も歯ごたえもお肉に見せかけてありますが、ちゃんと植物で作られています。

 

お肉のように見えてお肉じゃない、そんな工夫が沢山あって面白いのが、中華式精進料理の魅力です。

 

ちなみに、香港では仏教徒の方も多く、精進料理は仏教行事に合わせてよく食べられています。また、体調によって肉類を避けたいときに選ぶ人も。

仏教徒でなくても、ベジタリアンでなくても、病気じゃなくても、大丈夫。中華ジャンルの一つの選択肢として人気です。